S君と重ね着の女王
のっち(仮名 小5女子)は重ね着の女王だ。
のっちの重ね着はオシャレ女子がするところの重ね着コーデ(ゝω・)vキャピ
とはまったく気合いが違う。そんな生っちょろいものではない。
寒いから重ねる!ただそれ一筋!!
のっちの重ね着は例えばこういうことだ。
ヒートテックレギンスの3枚重ね。更にその上にチノパン。
とか、
キャミ+ヒートテック2枚重ね+シャツ+トレーナー+中綿入りブルゾン
とか。いったい何枚重ねてるんだ?と思わず数えてしまうような重ね着っぷり。
この着ている服を数えるって行為で思い出したことがある。
私が通っていた小学校では健康のためと言って冬に薄着でいることを良しとしていて
毎朝その日に来ている服の枚数を各自数えてチェック表に記入していた。
そのチェック表を元に今年の冬は誰々君が薄着ナンバーワンでした!!みたいな
表彰もあったので
みんなとりあえず薄着にしようね!的な雰囲気は出しつつも
だいたいの子は下着+トレーナー+上着の3枚だったし
たまに上着を着ないで来たぜっ!で2枚になる頑張るボーイズもいるにはいたのだけど
実際のところ先生も無理して薄着にさせようとはしていなかった。
そんな中、異彩を放っていたのがS君だ。
S君は1年中どんな時でもランニングシャツ1枚と半ズボンなのだ。
「お、おなかがすいたんだな」の山下清のように下着姿だったわけではなく
夏に着る衣類のランニングシャツではあるのだけど
それにしても真冬にランニングシャツと半ズボンのみとは。
S君は唇を紫にして鳥肌を立てよく震えていたけれど
冬の終わりに表彰台に上り賞状を手にする時のS君はものすごく誇らしげだった。
高学年になるにつれ、そんなS君のことを子ども達もさすがになんか変だよね?って思うようになった。
S君の服はランニングシャツと半ズボン。
1年中ほとんど同じランニングシャツと半ズボン。
狭い町内なので、親同士の中ではもうとっくの昔から周知のことだったのだろう。
S君ちにはお洋服を買うお金が無かったんだ。
ある時、見かねて大人達がS君にお下がりの服をあげようとしたことがあった。
だけどS君ちのお母さんは服をもらわなかったらしい。
お金が無いから服を着てないんじゃないんです。
健康のために薄着でいるんです。
うん、そうだよ、そういうことなんだよね。
だからS君は毎年誇らしげな顔で表彰台に上がる。
私たちもまたそれにたくさんの拍手を送ったんだ。
そんなS君。
中学生になったらちゃんと学ラン着てました。
おしまい、ちゃんちゃん。
書いている人ヒバリ舎代表 整理収納アドバイザー 内山ミエ
ヒバリ舎は部屋の片づけ方で困っている人に片づけ方を教え
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